細部まで精巧なモザイクタイルやアーチ型の装飾が施された美しいイスラム建築。
イスラム教徒が大半を占めるイスラム圏では、モスクや学校、その他の様々な建物がイスラム様式で建てられており、その装飾の繊細さは目をみはるほどです。
私は宗教建築物を見るのが大好きで、旅先では必ずモスクや教会を観光しています!
特に初めてイスラム教のモスクを見学した際は、神聖な雰囲気と細やかなタイルの装飾が作り出す異空間に、言葉では表すことのできないほど感動したのを覚えています。
世界では数多くのイスラム建築がありますが、そんなイスラム建築の世界を少し知ってみたくありませんか?多少の知識があれば、観光時の楽しさも倍増するかもしれません!
今回は、イスラム建築の特徴や装飾について初心者でもわかりやすく解説していきます。イスラム建築を堪能できるおすすめの観光スポットにも注目です!
目次
イスラム教のモスクの特徴とは
イスラム建築は多様な建築であり、その材料や技術は様々ですが、装飾などのイスラムにおける”美”は、神「アッラー」へ捧げることを一貫して追求され、歴史を通して発展してきたといえるでしょう。
そして、その美を象徴しているのが、イスラム教徒がお祈りを捧げるための場所である「モスク」であり、イスラム建築を語るうえでは欠かせない象徴的な建造物となっています。
現在のイスラム諸国では、どこの街へ行ってもモスクを見つけることができ、モスクの形状はそれぞれの国や地域で異なっておりますが、基本的な部分は共通しています。
まずは、そのモスクの基本の特徴を4つご紹介いたします。
ミフラーブ
「ミフラーブ」とは、大多数のモスクに備えられた窪み状の設備であり、礼拝時の方向「メッカのカーバ神殿」を示す大変重要な役割を担っています。
メッカはイスラムの聖地であることから、イスラム教徒にとって、メッカに向かってお祈りをすることは非常に大切なことなのです。
礼拝室の最奥の壁に設置されるミフラーブは、アーチ状の窪みの形をしていることがほとんどで、色鮮やかなタイルやアラビア文字などの、手の込んだ装飾が施されています。
イスラム教徒の人々は、モスクが近くになくても常に方向を確認して礼拝を行います。最近ではアプリでも確認できるので便利なんだとか!
ミンバル
「ミンバル」とは、元々はキリスト教の牧師が礼拝を導き説教を行う場所である説教壇で、イスラム教の指導者である「イマーム」が、説教やコーランの朗読を行う場所です。
イスラム教のモスクの形式は、同じく一神教のユダヤ教やキリスト教からの影響を受けていることも、なんだか面白いポイントですね。
通常ミンバルは、ミフラーブの右側に設置されていることが多く、モスクの原型ともいわれる「預言者ムハンマドの家の構造」にならったとされています。
私はどうしても「説教=怒られること」を想像してしまいますが、元々は、宗教の教えを人々に説き聞かせて導くことを意味しているんですね!
ミナレット
モスクを外から見たときに、付随して設置されている塔を見たことがありませんか?
この塔は、1日に5回行われるお祈りの呼びかけである「アザーン」を行う場所であり、「ミナレット」と呼ばれています。
設置されているミナレットの数は特別決められているわけでなく、中には多数の塔が設置されているモスクも多く存在します。また、形も煙突型や断面型など様々で、時代や国によって異なる形をしています。
例えば、モロッコのミナレットの特徴は角塔型と呼ばれ、長細い四角型となっています。
’’アザーン’’を聞くと「イスラム圏にきたなぁ~!」と、高揚感がかき立てられます。国によって特徴が違うので、ミナレットの形に注目してみるもの面白いですよ!
中庭
イスラム教の預言者ムハンマドがメディナ(イスラムの第2の聖地)で作った家が、世界で初めて作られたモスクといわれており、そのモスクにはレンガで囲った「中庭」が設けられていました。
実は、イスラム建築の原点は、預言者ムハンマドが築いた「預言者の家」であり、その後に作られたモスクには、これにならって中庭が作られるようになりました。
イスラム教では、ムハンマドが反勢力に追われ脱出した金曜日を安息日としており、金曜日の昼に合同礼拝が行われます。
大勢のイスラム教徒が一斉に礼拝できる大モスクの必要性からも、多目的に使用が可能な中庭が重視されてきたといえるでしょう。
イスラム建築の原型は家だったのですね!そういえば、モロッコの住居にも「パティオ」と呼ばれる中庭があるので関係があるのかもしれません!
イスラム建築の装飾や技法の特徴!おすすめスポットも紹介!
イスラム建築は、モスクなどの「宗教建築」、宮殿や住居などの「世俗建築」に分けられ、非イスラム圏の様々な建築にも大きく影響を与えてきました。
その様式や技法は、古代インドで発展した数学を継承し細部まで計算されていることから、美しいの一言では表せないような構造や装飾が空間を包み、人々を魅了しています。
単なる見た目だけの美しさだけではない、この空間を作り出す秘密は何なのか、もう少し深掘りしてみたいと思います。
ここからは、イスラム建築のや装飾や技法と各おすすめスポットについて見ていきましょう。
Alicatado(アリカタド)・Calligraphy(カリグラフィー)・Arabesque(アラベスク)
イスラム建築にかかせないのが、何といっても精巧な装飾です。
偶像崇拝が禁止されているイスラム教では、モスクや宮殿に人や動物などの特定の対象が描けないことから、様々な色や形を使った抽象的な模様が発展してきました。
この模様を作り出す装飾美術には、主に「アリカタド(モザイクタイル)」「カリグラフィー(アラビア文字)」「アラベスク(植物)」の3種類があり、それぞれを組み合わせて装飾されることも多いです。
また、素材も様々であり、石・タイルなどの焼き物から、木・ガラスに渡って使用されています。
特に色鮮やかな幾何学模様のタイルは、モロッコに多く見られ、全ての工程を手作業で行うモザイクタイル装飾は、「ゼリージュ」と呼ばれるモロッコの伝統手法となっています。
モロッコでは、美しいモザイクタイルや、繊細な彫刻などのイスラム美術を楽しめる観光スポットが数多くあります!中でも有名なのは「アリー・ブン・ユースフ・マドラサ」です!
「アリー・ブン・ユースフ・マドラサ」
かつてはイスラム教の神学校として使用されていたアリー・ブン・ユースフ・マドラサは、マラケシュの有数の観光スポットです。繊細なモザイクタイルやカリグラフィーの装飾、美しいアラベスク模様が施された建物は、イスラムの美そのものです。
Islamic Geometric Design
イスラムの幾何学的デザインを詳しく知りたい方に、1つ本を紹介します。
「Islamic Geometric Design」では、複雑なイスラムの幾何学模様などのデザインを歴史的・物理的に分析されており、詳しい説明がなされています。
また、模様のパターンが作成されたプロセスまでも載っているため、幾何学的パターンを自分で書いてみることも可能となります。
洋書のため、言語は英語となりますが、かなりの情報量です。
8世紀から19世紀までの北アフリカから、イラン・ウズベキスタンなどのイスラム世界のモスク・マドラサ(学校)・宮殿にわたる美しい写真も必見。
Muqarnas(ムカルナス)
「ムカルナス」とは、鍾乳石状に小さな曲面が集合してできる凸凹が層をなす技法で、ドームの内面や天井に使用されていることから、天井装飾として知れ渡っています。
このドームや天井を覆い尽くす複雑な立体構造には、タイルや彫刻などの装飾がなされ、その美しさは見る人の目を奪います。まさに、幻想的な要素を好むイスラムの空間特性といえるでしょう。
ムカルナス自体は、ペルシャを中心に活用されてきましたが、今ではあらゆる建築に取り入れられています。
なんだか吸い込まれそう…!ムカルナスで有名なのは、イランの「イマーム・モスク」ですよ!
「イマーム・モスク」(シャー・モスク)
イマーム・モスクは、イランの観光名所イマーム広場の南側に位置するモスクで、鮮やかなブルーを基調とした天井のムカルナスが美しく、その天井を彩る細やかなモザイクタイルの装飾も素晴らしいです。まさにイスラム建築の集大成と言えるでしょう。
場所:イラン・イスファハン
地図:GoogleMap
周辺の観光スポット:イスファハン観光
周辺のホテル:イスファハンのホテル
Iwan(イーワーン)
「イーワーン」とは、中庭などの大空間に向けて開かれた、天井がアーチ状となっている空間のことで、その空間は一方が完全に開き、三方が壁で囲まれています。
イーワーンはペルシャのイスラム様式のモスクに多くみられ、ペルシャにて発展してきましたが、現在ではイスラム建築の基本的な設計として定着しています。
イラン中部に位置し世界遺産でもある「ジャーメ・モスク」はイーワーン様式を取り入れた最古のモスクと言われています。
イーワーンが取り入れられている有名な「ジャーメ・モスク」もイランなんですね!実は私が次に行きたい国はイランです。イランにも観光できるモスクがたくさんあるんですよ!
「ジャーメ・モスク」
イランのイスファハンにあるジャーメ・モスクは、イラン最古の金曜礼拝用の大モスクです。このモスクに採用されたイーワーン形式が、後にイスラム建築の典型となりました。まさにイスラム建築の基盤ともいえる貴重な建造物です。
場所:イラン・イスファハン
地図:GoogleMap
周辺の観光スポット:イスファハン観光
周辺のホテル:イスファハンのホテル
Dome(ドーム)
モスクをイメージした際に、ドーム型の屋根を想像する方も多いのではないでしょうか?
それもそのはず、「ドーム」はイスラム建築を通して発展してきた技法の1つで、イスラム圏のみならず、マレーシアやインドなどのアジア圏でも、このドーム型のモスクを目にすることができます。
ドームは、室内空間を充実させることにあったともいわれており、常に空間の拡張を求めて発展してきました。また、天井に美しく施された装飾が、より一層独創的な空間を作り出しています!
特にモスクの中央にドームを設置する形式は、オスマン帝国からトルコ共和国に至るまでのモスク建築の主流とされており、トルコのモスクにおいて良く目にする形式です。
トルコではブルーモスクが有名ですが、「スレイマニエ・モスク」も素敵なんですよ!なんとも言えない神秘的な空間に包まれる感覚がたまらないんですよね~!
「スレイマニエ・モスク」
ドームの天井
トルコ建築の最高傑作ともいわれるスレイマニエ・モスクは、オスマン帝国を最盛期に導いたスレイマンのために作られたモスクです。その設計も見事なもので、外観や内部はもちろんのこと、モスクの庭から一望できるイスタンブールの絶景も必見です。まさにイスタンブールを象徴するモスクです。
場所:トルコ・イスタンブール
地図:GoogleMap
周辺のツアー:イスタンブールのツアー
周辺のホテル:イスタンブールのホテル
Hypostyle(ハイポスタイル)
多柱式建築とも言われる「ハイポスタイル」は、多くの円柱で屋根や天井を支える方法で、大人数が同時に礼拝するための大空間を確保するために普及した様式です。
また、この多柱式の空間のことを、ハイポスタイル・ホールと呼び、様々な大モスクに設置されています。
ドームもそうですが、モスクや宮殿には空間を確保することを考えて、様々な技法が取り入れられていることがわかりますね!ハイポスタイルで有名なのは、なんとヨーロッパ!スペインの「メスキータ」です!
「メスキータ」
スペインのコルドバに位置するメスキータは、イスラム教のモスクとして建設されたのちに、キリスト教によって新設・増築を繰り返した珍しい建造物です。イスラム教とキリスト教の2つの宗教が同居する形で現在の姿となったメスキータは、複雑な歴史を持つユニークな大聖堂です。
まとめ
イスラム建築は、イスラム教の普及により歴史を通して発展してきました。
神「アッラー」へ捧げるための美を追求することで、精巧な装飾や様々な様式が取り入れられたモスクや宮殿は、人々を魅了し続ける神秘で美しい空間が広がっています。
遠いアラビア半島から広まったイスラム教は、接点が少ない私たち日本人にとっては未知ともいえますが、今や世界規模の宗教となっています。
宗教思想を理解するのに難しく感じる方も、建築や美術という身近でもある観点からイスラム教について学んでみてはいかがでしょうか?
特にその建築技術や美術を間近で堪能できるモスクの空間は、圧巻の一言に尽きます!ぜひ実際に訪れてみてくださいね!
コメント